「ことば」という記号は嘘つきだ
恋愛トークはどんな場でも盛り上がる。
友達との会話では鉄板。
ファミレスのドリンクバーにどれだけお世話になったことだか。
カフェで話たとしたら、何回あの店員さんはお水を注ぎにきてくれたんだろう。
こういうのは友達だけじゃない。
初めて会う人でもお酒が入ると壁がなくなる。
時間を忘れて話すなんて、少なくないのは私だけではないはず。
今まで私が飲み屋で出会った人はみんなそうでした。
誰とでも盛り上がる話が、恋愛トーク。
その中でもよく論争になるのが
「大人の男女間に友情は存在するのか」ではないか。
恋愛系のコラムでもよく見かけるこのテーマは
話し始めたらもう止まりません。
友情なんて絶対にありえないやら
恋愛感情のない異性の友だちなんて普通にいるでしょやら。
激論が飛びかって、終わりが見えなくなってしまいます。
ちなみに私が出会った女性はこう言っていました。
「会った男性は全員恋人候補と思わないともったいなくない?」
私は「友情は成立する」人です。
私には学生のときからの男の友人がいます。
2人きりでどこか出掛けたり遊んだりしたことは何回も。
でも恋愛関係に発展したことは一度もありません。
寝たことも、キスをしたことも、ましてや手を繋いだこともありません。
しようとも思わないですし、したいとも思ったことないです。
それは相手の男性に失礼だと思われる人もいるかもしれません。
ですがこの映画で草太が持っているスイッチを私も使っているのです。
草太の仕事は「男女関係にならないスイッチ」を持つプロのレンタルトモダチ。
スイッチを自由自在にON/OFFすることが出来る。
だからお客さんとは恋愛関係になることはないらしい。
それは私にもよく分かります。
私のスイッチは学生時代の友達と仕事関係では自動的にONになります。
自分自身が不器用な性格なのを昔から知っていて
どこか線引きしないと生活しづらいところがあるのです。
そんな中でいつの間にか持っていたのがスイッチでした。
仕事場は恋愛を意識してしまったら、仕事が手につかなくなるんじゃないかと。
学生時代の友達はみんな本当に大切な友達なので、この関係が崩れることが怖いからです。
だからと言って、友達グループのみんなが私と同じかというとそうではありません。
中には付き合っていたことがある人もいます。
スイッチを持っているのは私だけです。
スイッチを持っているといいことばかりかというと
全然そんなことはありません。
器用に思えるかもしれませんが、反対に不器用なのです。
スイッチで感情のコントロールが出来てしまうことで
恋ができないという困った状況にもあります。
仕事でもONなので、生活の大半でスイッチを使っています。
一種の職業病と言うんでしょうか。
スイッチを入れなくていいところで
無意識に入れてしまっていることがあります。
それで恋が全然出来ないのです。
草太から見た那沙はレンタルトモダチのお客様。
那沙から見た草太は取材対象者。
どちらも仕事の関係でした。
草太にはスイッチがあります。
それ以上の関係になることはありません。
でも私には違って見えました。
仕事とはいえ、2人は会えば会うほど心に変化が見えてきました。
那沙はスイッチを持っていません。
「大人の男女間に友情は存在するのか」をテーマにして取材をしているということは
大人の男女間に友情は存在することに疑問を持っている証でもあります。
「どっちかが恋愛感情を抱いたら友達って言わないと思う。」
そう那沙は言いました。
月極カードのスタンプと写真の数が増えていく。
その数だけ那沙と草太の思い出が増えていく。
それが彼女の中で草太の存在を大きくしていきます。
でもそれは那沙だけなのでしょうか?
だから彼女は実験をしてしまったのかもしれません。
手をつないでも、キスをしても、SEXをしても
恋愛関係じゃないことはあります。
一夜限りだったり、セフレだったり。
もしかしたら友達でもSEXする関係なんてのもあるかもしれません。
恋愛感情があるからそういう行為をするのが普通ですが
行為をしたからって恋愛感情があるわけではありません。
感情が生まれたり、気付くことはあると思います。
でも行為=恋愛ではない。
じゃあ恋愛とはなんだろう。
那沙と同居する珠希は「恋」について「コントロールできない」と言いました。
ハッとさせられました。
恋をどちらかがした時点で、恋愛感情なんだ。
それに気付いたのは2人の間に1人入ってきたことでした。
それが那沙の友達の珠希です。
自分が先に出会ったのに、彼女は自分が知らない草太を知っている。
自分は仕事で会って、彼女はプライベート。
自分はスタンプカードだけの関係で、彼女は音楽で繋がっている。
そんなふうに理詰めしていたら嫉妬が芽生えてきます。
その嫉妬がどういう嫉妬なのか。
那沙は「ことば」を使うことにしました。
「ことばが記号みたいなふりをしている」
「ことばって記号みたいで記号じゃない」
そう思う「ことば」で自分の気持に向き合うことにしたのです。
その「ことば」で那沙は自分自身、仕事、珠希、草太
いろいろなことに少し整理がついたのかもしれません。
そんな那沙に私は、最後キュンとした。
月極オトコトモダチ
作品概要
https://tsukigimefriend.com/
この作品を観るには・・・
配信で観る
レンタルで観る
DVDを購入