自由に生きられないから、うらやましい
映画にはある年齢を越えてから観るべきだと思う作品がある。
それは若いときに観ても何も共感できなくて楽しめずに観終わってしまうような。
映画をよく観ていた学生時代にもたまに経験した。
みんなこの映画が面白いと言っているが、その時の私には何もわからなかった。
でもそれは人生経験という時間や経験値が必要だったんだと今ならわかる。
この作品もその一つ。タイトル通り「29歳」だ。
「29歳」という、なんだかよくわからない分厚い見えない壁を越えないと、この映画はわからない。
私はそれを通ったからこそわかる。
押し寄せてくる30歳への不安と、突きつけられる29歳の現実。
私も彷徨った。
仕事しかない私の人生から仕事がなくなったあの時を。
そして30歳までの怒涛の1年を決して忘れることはない。
私にとってその1年は思い返すと休養(静養)期間だった。
そんな私とクリスティは似ている。
私はあんなにデキる女ではないし、周りからのプレッシャーもない。
でもどこか似ていて共感できる。
ティンロのような自由に暮らす生き方はしてこなかった。
というよりできなかった。
自分が決めた型にはめて無難に過ごす毎日。
自由よりも常識や普通を選んで、はみ出さない。
それは昔からずっと思っていたし、私の悩みでもある。
そんな毎日に退屈で。
何もすることがないときに、仕事のことを考えている時間に嫌気が差す。
その時間を過ぎさせるために寝るという、ちょっとしたワープを使う。
この生き方がいいのか悪いのかはその人次第だが、思い返すと中身が空いていた。
収入は安定がいいし、破天荒に生きたいわけでもない。
ただ窮屈な箱からたまには外に出るような。
そんな暮らし方も少しはすればよかったなと20代の反省をした。
大切なことを見なかったり見ないようにすることは出来るけど
手遅れになってはどうしようもない。
29歳ってこんなに大変なんだと、ちゃんと教えておいてほしかった。