風がながす声
2020年5月16日
音が物語を先導し、それに彼ら彼女らの表情が追い、そのあとに言葉がついていく。
まるで作品自体が羊の群れを連れている光景そのものに感じた。
この映画の特徴的な部分は周りの音と、顔のアップ。
終始風の音が聞こえる、その音が登場人物間に流れる空気で。
この作品の主演は?と聞かれたら、私は風だとはっきりと答える。
それくらいこの作品には欠かせない存在で、風がなければ作品は変哲もないものになっていたに違いない。
そしてこの作品の言葉は感情ではなく、説明しかしていないようだった。
でもそれで十分。
だって音と顔が感情を届けているのだから。
耳で感じているものを見ている自分が顔の表情に載せている感覚があった。
忘れてはいけない。
木々や波、食事音や声といった他の音も素晴らしい助演であった。