「仕方がない」と発する息はどこか遠くに向いていた
「一人っ子政策」
社会科で学んだのは中学のとき。
テストの答えで一回出てくるくらいの言葉なんて
終わりさえすれば次の日にでも忘れている。
それは教科書で3行くらいの説明だった。
なのに大人になっても忘れることはなかった。
子どもの私は衝撃を受けたのだろう。
その頃の日本はもう少子化が叫ばれており
「子どもを産もう」が国の指針だ。
その真反対の一人しか産んではいけないというのが
中国の「一人っ子政策」だ。
授業を受けたときの印象としては
二人目以降は罰金が課せられ
国が推進しているくらいなのだと。
その時は中国という国や国民性は全く知らず
日本とさほど変わらないと思っていたからだ。
でも大人になり国際情勢なども少しわかるようになると
がらっと印象は変わってくる。
そして抱くものは、実情は違ったのではないか。
その答えを何十年という時を経て知ることになった。
「仕方がない」と口々に言う。
一人っ子政策にはこのまま人口が増え続けてしまうと
貧困で苦しむ人が大量に出ることを抑えるためと
国民のことを考えての政策だった。
しかしその政策は雑だ。
今より未熟な時代が故に横暴で。
技術や知識は未発達。
そして中国という御国柄があいまった。
国に従うように強制的な避妊手術や中絶。
生まれた子供を捨てたり拾ったり、殺したり殺されたり。
みんな「御国の為」だったのだろう。
現に一人っ子政策の推進に貢献したものは国から讃えられた。
しかしこれは異常だとしか私には思えない。
この子を殺すか、捨てるか、売るしか事実上選択肢がない。
ここから選ぶ苦しさは重く辛い。
一番子を生き続けさせてあげられることが望めるのは売ること。
いけないことではあるのだが
救われた命はたくさんあったと思う。
自分の子を売った者、拾ってお金稼ぎに売った者
でもそこにはこの子を助けたいという気持ちを持った者もいたはずだ。
そこまで人を追い詰めた根底が「一人っ子政策」だ。
これを時代だと切り捨ててしまえるのだろうか。
一人っ子政策は2015年に廃止された。
反対に人口比率が危ない状況に陥っており
国は子供を増やそうとしている。
一人っ子政策を強いられてきた人たちには
今がどう見えているのだろうか。
「自分たちの時代が今だったら・・・」と
考えたことがないはずはない。
あの時代に生きたからこそ
みんな何かしら抱えている。
そのなんとも表せない気持ちが
「仕方がない」という一言に落とし込まれている。